暮らしに根付く信仰心 神様やご先祖様を敬い共に暮らす


早川町を歩いてみると、「これは何だろう」と気になるものが見つかる。

道端にある祠と捧げられた弓矢。

畑の隅に挿してある小さな色紙のお札。

屋根の上におかれた竹の輪っか。

集落の入り口近くの木に掛けられたお札。

それぞれに意味があり、そこに暮らしてきた人達の様々な願いや祈りが、形になって表れている。

「山の神様」奈良田

 奈良田には、山への入り口や尾根筋に、少なくとも五か所、小さな祠がある。奈良田の人達は、この「山の神」の前を通るとき、花の枝や青い葉の枝を一本お供えし、「南無妙法蓮華経」とお題目を唱えて山に入る。

 1217日と117日は「山の神さん」と呼ばれる日で、現在も忘年会と新年会を兼ねて、公民館に集落中の人が集まる。1217日はお酒とミカンとオシンメェを、117日は手作りの弓矢を、「山の神」の祠に家長が奉納する。また、121日は「山の神様が弓を引く日」と言われ、この日に山に入らない人もいる。

 

「辻固め」赤沢

 赤沢では、集落の入り口にあたる2か所に、毎年、131日に新しい木のお札を取り付ける。これには、悪い病気

や悪い人が入ってこないようにという意味がある。昔は、道路を挟んで2本の木の間に縄を張り、その縄にお札を取り付けていた。車の往来が多くなった今は、邪魔にならないように片側の木に縄とお札をかけている。

 

「小正月」茂倉

 小正月の頃、集落の道祖神のそばにヤナギが立つ。竹や藁縄、色紙や半紙などで手作りされたヤナギは、集落ごとに形が違い、個性豊かだ。

 茂倉では、正月が明けると小正月の準備が始まる。女性たちは、13日に公民館に集まり、柳の先の飾りつけであるオサルを作る。男性たちは、正月に間に合うようにヤナギを立てる。柳の材料に使われるのは、子どもたちが書いた書初めだ。

 114日どんどん焼きが行われる。どんどん焼きの灰は、「ナガムシ(※)来るな、ヘビ来るな」と言いながら家の周りに撒いていく。一種の虫除け、厄除けか。ヤナギは1月末頃に倒す。ヤナギを作るのに使った竹は、輪っかにして各家の屋根に乗せる。これには火伏の意味がある。

ナガムシとは、ムカデのことである。

暮らしに息づく願いと祈り

山から無事に戻れますように。畑の作物が虫に食われずに育ちますように。火事が起こりませんように。悪い病気が村に入ってきませんように。願いや祈りの形の中に、集落の人たちの様々な思いが垣間見られる。

もちろん、現在を生きる早川の人達は「神頼み」以外の対策や努力もしている。けれども、いつの時代も人間の力ではどうにもできないことがある。早川で願いや祈りが今も暮らしに根付いているのは、それを拠り所にしてきたこと、そして、どうにもできないことと向かい合い、折り合いをつけてきた証といえないだろうか。

やまだらけ80号「暮らしに息づく願いと祈り」より>