春の山野草
日差しが強くなるにつれ、次々とほころび始める春の花々。福寿草、フキノトウ、梅、オオイヌノフグリ、タンポポ…。早川に春の訪れを告げる小さな花々に、奈良田在住のカメラマン・深沢正晴さんのレンズが優しく向けられます。
早春の穏やかな一日、正晴さんの撮影に同行し、早川の自然の素晴らしさを教えてもらいました。
山人インタビュー1
今回の取材でお世話になった、深沢正晴さんにお話を伺いました。
■ 花の写真を撮り始めたきっかけは?
20年以上前のことになるかな。西山の山奥でホテイランと出あったのが始まりだね。それまでは山の写真をよく撮っていた。5月ごろ、ウドを採ろうと子どもを連れて山に登った。コメツガの原生林の中を歩いていたら、ピンク色の花が咲いているのを見つけたんだ。見た瞬間はツツジかと思ったけど、それがホテイランだった。
早川の山にもホテイランはあるだろう、と想像はしていたけど、本当にあったんだ、と感激したね。その姿をぜひ写真に撮りたいと思ったんだ。
■ 早川のさまざまな花を撮り続けてきて感じることは?
早川は暖地から亜高山帯まで変化に富んだ地形だから、町全体を見回すと、貴重な植物が意外に身近にあったりするんだよ。
草花の写真を撮るというのは、毎年定点観測しているようなもの。今年は花の数が少ないな、なぜだろう?と思ったとき、前の夏の長雨の影響かな、とかあの木が倒れたからかな、とかそういったことを観察すると環境の変化が分かってくる。
花の写真を撮り始めたころは、接写向きのレンズを持っていなかったし、なかなかうまく撮れなかった。近寄って撮ってみても、その花らしさやいきいきした感じが表現できない。もう止めようかと思ったこともあったけど、続けてこれたのは、花そのものの魅力が大きかったからだね。
早川の花の写真を撮ることで、自分の住んでいる地域の素晴らしさを発見しているんだ。できあがった写真は、その中に自分が住んでいるというあかし。私の写真を通じて地元の人たちが「早川にはこんなにきれいな花が咲く豊かな自然があるんだぞ」と住んでいる地域を誇れるようになってもらえたらうれしいね。
■ これからどんなものを撮っていきたいですか?
撮っても撮っても、これでいいのかなぁと常に思う。そうしてまた撮る。毎年咲く花であっても、まったく同じシーンになることはないからね。完結はないともいえるんだ。
これから初夏にかけては花の多い時期だから、わくわくするよ。歩いていると景色が毎日毎日違って見える。新鮮な驚きがあるんだ。
花の写真だけでなく、「早川の水」といったテーマを設定して、年間を通して撮ってみることもしてみたい。
花が咲いているから、とりあえず撮っておこうという気持ちでは、なかなか気に入る写真は撮れないものだ。写そうという意識が先走ってはいけない。心を動かされたときに、心が思うままに写す。そんな撮影をしていきたいね。