粉を喰らう~山村の粉食文化~
「昔はこっから見える山一面、畑だったよ。」
今はスギやヒノキが植林されている山の斜面を指して、年配の人は言う。かつて早川町内では、集落から遠く離れた山奥まで耕作していた。焼畑もあった。そういった畑で作った麦や雑穀が、米の少ない時代の主食であった。
当時の食生活の話の中には、様々な「粉」が登場する。小麦、ソバ、アワ、キビ、ヒエ、モロコシ、サツマイモ、大豆に小豆。
それらは、かつて各集落にあった「車屋」「挽き屋」「搗き屋」などと呼ばれる水車小屋で脱穀・製粉された。粉になった麦や雑穀類は、麺になったり団子になったり、焼かれたり蒸されたり…。
こういった料理に対して、当時を生きてきた人たちの評価は「それしか食べるものがなかったからね」あるいは「毎日食べさせられて、いやだったよ」と言うのが一般的。
そんな中、「小豆粥が美味しくて好きだったよぉ」と話す、茂倉集落の阿部那加子さんに出会った。
小豆粥ってどんなもの?
百聞は一見に如かず。「そんなにおいしいのなら、ぜひ食べてみたい」と那加子さんにお願いし、再現してもらうことになった。
小豆粥を通して、山人の知恵の詰まった食文化、「粉食」に迫る。
おばあちゃんの試してレシピ1
ちんちん焼き
畑仕事の合間、おやつ代わりに食べていたという「ちんちん焼き」。これも、今回の取材で教わったレシピです。モロコシの粉と小麦粉を混ぜて焼くだけの簡単料理ですが、モロコシの粉の独特の香りがたまりません。ちなみに、その変わった名前。油にタネを落とすときに鳴る音から、付いたとのことです。
■材料(4人分)
・モロコシの粉 200g
・小麦粉 200g
・重曹 小さじ2
・砂糖 大さじ3(甘さはお好みで)
・サラダ油 適量
■作り方
①油以外の材料をボールに入れる。
②水を注ぎかき混ぜる。 ※ポタポタと落ちる程度にザックリと。
③フライパンに多めの油を注ぎよく温める。
④タネを落とし形を整える。
⑤フタをして弱火にし、じっくりと焼く。
⑥焼き色がついたら裏返し再びフタをする。
⑦両面に焼き色がつき、串を刺してタネがついてこなければ出来上がり。お好みでギャムなど塗っても美味しいですよ。