移住者の早川ライフ
「田舎暮らし」という言葉をよく耳にするようになった。昔はネガティブなイメージだったこのとこも、最近では個性的で豊かな暮らしの象徴として憧れさえ抱かれているようだ。早川町でもここ数年、都会からの移住者が増えている。過疎化を解消するほどではないが、新しい動きが起きていることは確かである。一口に移住者といっても、人それぞれ。自分の創作の場を求める人、自然を相手にする仕事を求める人、老後の生活の場を求める人などさまざまなケースがある中で、今回は定年退職を待ちきれずに早川町に移住した浦邉義明さん、三枝子さん夫妻に密着取材した。
共通の趣味である歌を通して知り合ったお二人は、神奈川県川崎市でマンション暮らしをしていたが、三年前に早川町を訪れて以来この町の虜になり、去年ついに移住。子育ても終わり、老後の人生を楽しむために早川町で暮らすことを決めたのだ。そこにはゆったりとした時間が流れ、贅沢な自然とともに自分らしく無理なく暮らす二人の姿があった。
早川町で暮らそう!
取材にご協力いただいた浦邉さん夫妻に、移住までの経過や移住希望者へのアドバイスを伺いました。
■早川町との出会いを教えてください。
三枝子さん(以下、三):友人から「いいところがある」と勧められていたんですよ。2001年の秋に主人と初めて来たときには、紅葉が素晴らしくて、観光地化されていないところに魅せられました。
その後、旅行嫌いだったはずの主人が「今度いく行く?」と言うんですよ。結局その後年内に3回も来ました。当時はマンション暮らしで定年後は土いじりやものづくりができる家に住みたいと思っていたので、来るたびに「こんなところに住めたらいいな」という思いが強くなってきたんです。
■実際に住むまでにどんな経緯があったのですか。
三:早川町に来るたびに町内の知り合いも増え、みんな本当に親切にしてくれました。先に移住してきた方とも仲良くなって、いろいろなアドバイスをもらい本当に助かりました。
2002年には1年間四季を通して、集落の日当たりを調べたり空き家を探したりしながら、町内を巡ったんです。ほとんど全ての集落に行ったと思います。体が弱くなってからの生活を考え、住むならあまり山奥すぎず、適度に平らで日当たりのよい集落に住みたいと思ってここに決めました。
義明さん(以下、義):仕事のストレスなどから体調を崩し、定年まであと1年半くらい残っていたんですけど、早川に住みたくなって、仕事を辞めようかなと思い始めました。
三: それで私が「体を悪くしてからじゃ遅いから、辞めちゃえば」 と後押したんですよ。仕事辞めちゃえと勧める妻も珍しいわよね(笑)。
■こちらの生活で大変と感じることはありますか。
義: 特に大変と感じることはないですね。ただ、人が減って高齢化していくことで、集落の共同作業に支障が出てきていることは気になりますが。なにしろ老後の生活を求めてきたのに「なんだ、わけーし(若い人)じゃねえか」と言われたときは驚きましたよ(笑)。
■これから移住を希望する人にアドバイスがあれば数えてください。
義::何事も自分でやっていく気概がないと、田舎暮らしはできない。ただ「いいな」だけで移住すると失敗するでしょう。
三:私たちは 1年という時間をかけて、早川町とはどんなところかを、実際に住んだことを想像しながら調べました。そして本当に住んでも大丈夫だと思ったから移住を決意したのです。その間にこちらでの知り合いも自ずと増えたので、住み始めたときは既に友人が結構いました。友人のサポー卜に救われたこともあります。だから準備期間は必要ですね。
また集落生活は「郷に入れば郷に従え」ですよ。100%納得はできないかもしれないけれど、それでもきちんと付き合いができないと長続きしないでしょう。