自然と共生する術を知る 焼畑文化 大地の力を蘇らせ維持する農法


皆さんは「焼畑」をご存じだろうか? 山奥に存在する農法のひとつである。

山林を焼いて畑を開墾し、15〜16年を1周期とし、地力が落ちると耕作をやめて畑が山林に戻るまで放置し、再び焼いて耕作する。土から生まれる食料に生かされる身として、土を枯らさない、土を大切にするこの農法が、世代を超えて奈良田という集落で長く伝承されてきた。

 

奈良田では焼畑を「アラク」と呼ぶ。昭和30にその歴史は終わったが、焼畑という本格的な原始農耕が最後まで続けられた地域は、奈良田ではないかとも言われている。

肥料は一切使わず、「やぶ焼き」でできた灰と腐葉土で作物を耕作した。農作業の期間中は、山の中に「アラク小屋」という作業小屋を建て、そこに寝泊まりしていた。寝泊まりした者が漁師であれば、小屋の中から畑の鳩を撃って獲り、食べたりもした。

 

焼畑は大変な作業である。涙抜きには続けられず、苦労の物語にはどれも汗のにおいがする。厳しい自然の中を生き抜いてきた先祖のたくましい開拓魂、勤労精神は、忘るべからざるものである。

 

●奈良田の焼畑『やぶ焼き』3年間の流れ

アラク

(1年目の畑)

開墾 ハンノキ(ケヤマハンノキ)やカラマツの林を伐採
5月 やぶ焼き 昨年に切った木々を焼き、焼け残った幹や枝を片付け、そこに粟を蒔く
クナ

(2年目の畑)

豆を蒔く 小豆か大豆を蒔く
コナシマ 又は フルクナ

(3年目の畑)

粟を撒く<最後はハンノキの実苗(みしょう)の苗を植え、山林に戻るまで放置>

『アラク(秋藪)』とは別に、焼畑1年目の7月に山林を伐採して乾かして焼き、短期間で収穫できる蕎麦を撒く畑を『そばじ(夏藪)』という。

 

(参考:秘境奈良田、めたきけし12号より)

「秘境奈良田」の焼畑の章が、早川町役場のウェブサイトに紹介されています


 

早川町歴史民俗資料館

複合施設「奈良田の里」内の資料館。
地力を回復させながら行う雑穀栽培型の焼畑農耕に関する貴重な資料を展示。

大人 600円/小・中学生 300円(南アルプス山岳写真館と共通)

TEL:0556-20-5556
営業時間:10時〜16時
定休日 :水曜日(祝日の場合は翌日、木曜日)
住所  :〒409-2701 山梨県南巨摩郡早川町奈良田486
展示内容:歴史、自然、文化財
<国指定重要有形文化財所蔵>

≫詳細は施設サイトへ