苦楽を越えた絆に安心 ゆうげえし2/助け合いが自然な姿 助け合うから暮らしていける


早川には、「ゆうげえし」という相互扶助を表す言葉がある。漢字では「結い返し」と書く。

困っている時に助けてもらったら、誰かが困っている時に助ける。早川の人々には、そんな「おたがいさま」の精神が宿っている。

 

こんなことがあった。

2014年2月14日から、甲信地方は記録的な大雪となった。早川町もほかではなく観測史に残る豪雪となり、山梨県道37号線が通行止めとなって全町民が孤立した。この状況の中で、停電に見舞われた地区もあった。

 

この危機を、行政が、建設会社が、町民が、数々の試練に立ち向かい、一丸となって乗り越えた。

町内各地でそれぞれの物語があった。その根底にあったのは、相互扶助と「何とかしてやりたい」という思いやりの気持ちであった。早川町は、普段顔を合わせる集落内はもとより、業者も、役場職員も含め、町全体が顔の見える関係で結ばれている。その賜物だろう。

 

災害時ばかりではない。「昨日の晩、知らない人が門の前にいたから、声かけてみた」という、近所のおじさんの何気ない言葉は、「暮らしの安心」を象徴している。見知らぬ顔はすぐ分かる。集落の絆は、盗賊や泥棒などから集落を守ることにも役立ってきた。

現代社会が失いつつある相互扶助の精神は、山あいの不便な地域だからこそ、また町が合併せずに歩んできたからこそ、そして昔ながらの集落が受け継がれてきたからこそ維持されてきた。早川で育まれる「ゆうげえし」は、大切なライフラインとして、今もしっかりと息づいている。

 

やまだらけ75号「大雪を乗り越えて」より