早川の蕎麦徹底解剖!
「そばはご馳走だったねぇ」
早川での昔の食事について尋ねると、こんな答えが返ってくることが多い。
ここ早川町では四方を急峻な山々に囲まれ、平坦な土地が少ないために米作りはほとんどされず、山の頂上まで畑を耕し、麦、粟、ヒエ、キビなどの雑穀や大豆、野菜などを栽培し暮らしてきた。
主食となったのはこれらの雑穀で、その多くは集落に必ず一つはあった水車で粉に挽き、粥、のしこみ、団子(だんす)などにして日常的に食べてきた。しかしそばだけは、お正月やお盆、結婚式やお祭りなどの「ハレの日」や、お葬式や大切なお客さんが来た時にしか食べられないものであったそうだ。そばは特別な日の「ご馳走」という訳だ。
その頃のそばは殻を取り除かず挽いたので、今よりも色は黒かったという。かつては水車や石臼で挽いた「無骨で粗引き」な粉だったのだろう。また、油揚げやニンジン、鶏肉などで作った汁で食べる「かけそば」が主な食べ方ではあったが、季節によってはセリを混ぜたり、茹でて千切りにした大根を混ぜたり、具を増やすことでそば粉を節約しながらも、季節の味と色彩でもてなすための工夫がなされてきた。
そんな早川のそば文化ともてなしの精神を今でも受け継ぐのが、早川集落の「そば処アルプス」と赤沢集落の「武蔵屋」だ。それぞれを訪ね、そばづくりへの思いを探った。
おばあちゃんの試してレシピ4
そばを使った郷土料理を二品ご紹介。「ねりくり」は、その名の通りそば粉を「練り繰る」だけ。昔は、おやつではなく食事として食べたそうです。奈良田の民宿・奈良屋さんに作っていただきました。
「大根そば」は、今でも町民の食卓にのぼる人気レシピ。もともとは、大根で麺を増やしてそば粉を節約するための工夫ですが、清涼感のある見た目が美しく、二種類の麺の食感の違いも楽しめます。
ねりくり
■材料
出し汁(昆布か煮干し)…………3カップ
そば粉……………………………150g
塩…………………………………少々
野菜………………………………適量
※今回はカボチャとさつま芋を使ったが、大根、人参、青菜など、ある野菜を使ってもよい。
■作り方
①出し汁で乱切りにした野菜を煮る。
②野菜が煮えたら、塩とそば粉を加える。
③火をつけたまま、木べらなどで練り繰る。
④汁気がなくなり粘りが出たら完成。
⑤お好みでエゴマか砂糖醤油をかけて食べる。
大根そば
■材料
そば…………………2人前
大根…………………1/3本
※大根の量はお好みだが、目安はそばの半分程度
薬味(ねぎ、わざび)…少々
つけ汁………………適量
■作り方
①千切りにした大根とそばを、別々に茹でる。大根は茹で過ぎない。シャキシャキとした食感が残る程度に。
②それぞれ水で冷やし、ざるに入れ水気を切る。
③大根とそばを混ぜて盛る。