まむし
三角形の頭に鋭い牙と鋭い目、褐色でずんぐりとした身体には銭型の斑点。
マムシは北海道、本州、四国、九州などに生息し、日本人にとって最も身近な毒蛇である。体長は45~80 cmと大きくはないが、強い毒を持ち、お腹を食い破って出てくるその姿からか、戦国武将の斉藤道三が「蝮の道三」と呼ばれたように、獰猛なイメージの代表として用いられることも多い。一方で、マムシはその生命力からか滋養強壮によいとされ、漢方としても用いられてきた。マムシエキス入りなどという商品を目にする方も多いのでないだろうか。
自然豊かな早川町にはたくさんの生き物が生息しているが、マムシもまた早川町に生息する生き物の一つである。そして昔から様々な形で活用されてきた。時には貴重な蛋白源として、そして大切な薬として、町民の生活に欠かせない存在であった。マムシの頭を木の棒で抑え、親指と人差し指で首をさっと捕まえる。とても毒蛇を扱っているとは思えない、手早い動き。そしてマムシを眺めるその顔は、みんな一様に嬉しそう。マムシは決して恐るべき存在ではなく、早川町民の密かな楽しみでもあるのである。
今回は、生活の中で生み出されてきた早川町の人々とマムシ活用の知恵や技について探っていく。