寄り添い支え合う保健師の仕事
過疎高齢化の進む早川町。現在の人口はおよそ1300人。高齢化率は50%に迫る。面積37平方キロメートルの中に36もの集落があり、集落間の移動は車以外では難しい。
おかずをお裾分けしたり、お茶飲みをしたり、元気にしているか様子を見に行き来したりしながら、生活や健康を近所同士で支え合ってきた早川。こんな光景、昔の日本では、都会だろうが田舎だろうが当たり前だったのかもしれない。だが、今や隣に住んでいる人の顔も知らない、声もかけない、というのは何も大都会だけの話ではないらしい。山を挟んだ早川の隣町でも、そういう状況はあるという。全国的に見ると、声かけや見守りを業者に頼む自治体まで出てきている。それが自然にできているのが早川のすごいところだが、他の人まで気を回せない、自分のことで精一杯、という高齢者が段々増えてもきている。
そんな早川町民の健康を、2人の保健師が日々飛び回り、支えている。1人は昭和56年から働いている深澤幸枝保健師。もう1人は、平成10年から働いている上田美穂保健師だ。2人とも、なんだか笑顔がまぶしい。そして、凛とした雰囲気を持っている。山梨県内の保健師1人当たりが担当する人数は平均で5000人に対して、早川町は単純に計算して1人当たり650人と手厚い。明るく優しく、時には厳しい2人の保健師の存在は、町民にとって、とても大きいように思われる。
そんな2人の保健師の仕事ぶりと、早川に何を思い、どんな未来を描いているのかに迫りたい。
山人インタビュー⑨
今回の取材でお世話になった2人の保健師さんに、お話を伺いました。
●保健師という仕事について、率直にどう感じていますか?
上田:この仕事は、失敗があっても、他の人には失敗と見えにくい。他の人に叱られなくても済んじゃう怖さはある。
深澤:異動のある一般職と違って専門職なので、自分達がどういう仕事をしているか、他の人に完全にはわからない。だからこそ、自分自身の「しっかりしなきゃ」という思いが必要。
●保健師人生の戒めになっているような出来事が、これまでにありましたか?
深澤:入院中の人に、病院にいる安心感から、結核検査の結果を伝えるのが遅れてしまったことがある。伝えるべきことが伝わっているか確認しなかった自分が甘かったなと感じた。それから、伝えるべきことはきちんと伝えるようになった。
上田:住民が望むような対応ができなかったことがある。その人ごとに、適した対応を考えてやっていかないといけないと思った。
●お二人の目から、早川町の10年後をどう見ていますか?
深澤:人口は少なくてもいい。少ないことが問題じゃない。住む人の生き方が問題。みんなが自分の存在価値を感じながら、1人ひとりが満足していれば良い。そこをマイナスに突いてくる人から守りたい。
上田:がむしゃらに人口を増やさなければ、という思いはない。人がいる間はいるし、町がある間はある。サービスをよくしても、お金をばらまいても、ここに住む動機付けにはならないと思うし、早川が好きで、早川で生活をしたい人達が集まってくるんだろうなあ…。
お忙しい業務の合間を縫って取材にご協力いただき、誠にありがとうございました。これからも、町民のためにがんばってください!