石を積むように、人から人へ
この写真は、かつての大原野集落の様子である。町政40周年を記念して発行された『目で見る はやかわの風景と歴史』掲載されているもので、昭和35年(1960)頃のものとされている。玉石がきれいに積み上げられた、傾斜地の農地を象徴する段々畑、そしてそれを支える見事な石垣だ。
段々畑を維持するには、石垣の手入れ欠かせず、場合によっては修復が必要になる場合もある。平らな畑は尊いもの。だから石を積むという技術は、その農地に携わる人であれば誰でもできる、あたり前の技術であったはずである。それも農作業、生産活動そのものが、おろそかにならない範囲で取り掛かるのが基本であって、早く、かつ強いものを築くということまでこなしたことだろう。しかし石を積むという技術だけでなく、準備や共同作業の進め方、道具とその使い方に至るまで、昔の人が試行錯誤して確立させてきた大事な文化が根本から、全国の中山間地域で急速に失われていっている。
今号では、令和元年(2019)度から、一般社団法人『石積み学校』や地元団体と協力して、日本上流文化圏研究所で開催してきている石垣修復ワークショップを取り上げたい。この取り組みを通じて、私たちが何を目指そうとしているのか、単なる懐古の念ではなく、未来志向の意味を、読者とともに考えていきたい。(上原)
特別企画「鳥の目虫の目」 その2
情報誌「やまだらけ」の発行
今回で取り上げるのは情報誌「やまだらけ」。つまり、本誌のこと。
「やまだらけ」は、早川で〝フィールドミュージアム〟を推し進めるためのメディアとして誕生した。〝フィールドミュージアム〟とは、「その土地の歴史・風土・文化そのものを博物館又は美術館に見立て、住んでいる人と訪れた人が互いに価値を発見していく仕組み」として定義される。町外から〝フィールドミュージアム〟推進を支援してもらうために立ち上げた「早川サポーターズクラブ」の会報として、平成15年(2003)に発行がはじまった。
「やまだらけ」と合わせて紹介が欠かせないのが「あなたのやる気応援事業」。町民自身によって地域資源を活かした商品開発や起業のアイデアを募り、審査を通った事業に助成することで、地域資源の掘り起こしから保全、継承につなげていくことを目的としている。この助成金のための〝まちづくり基金〟に充てられたのが「早川サポーターズクラブ」の会費である。「あなたのやる気応援事業」で助成を獲得した事業によって地域の魅力を向上させ、交流会、ツアーなどを通じて、サポーターズ会員に還元していく。「やまだらけ」はこの循環構想を実現するための、町民と会員をつなぐ会報であり、また輪を広げるための情報発信メディアであった。
「早川サポーターズクラブ」は、平成28年(2016)3月末をもって解散となったが、「やまだらけ」は発行を続けている。普通の観光では味わえない、早川の深い魅力を伝える情報誌であることを目指し、現在は上流研の正・賛助会員と、町内全戸への配布をおこなっている。これからも早川町民の豊かな暮らしぶりを通して、田舎や山の暮らし、そして早川町への興味関心を持ってもらうための情報源となるべく、町民とともに掘り起こした地域の様々な資源や魅力を余すことなく読者に届けていきたい。