先人の教えに希望を見る 現代に生きる強力 地域に根差した伝統の仕事を引き継ぐ


業種職種問わず新しい会社が出来ては無くなる新陳代謝が早い時代。それでも昔から代々引き継がれてきている仕事がある。早川町には強力という仕事が現在でも引き継がれている。

 

●早川町唯一の強力

強力(ごうりき)とは、登詣者の往復を介助する案内役である。案内から荷運び、そして駕籠人足といって山駕籠に人を乗せて運ぶ役目も担う。山駕籠に乗る人に寄り添い、また道中のアクシデントに備える。その険しい道のりを人を担いで登るには、強靭な体と精神が必要となる。

過酷なその仕事を今もなお継承する人物がいる。早川町で唯一の強力、依田淳さん(37歳)だ。強力を仕事にして17年になる。

 

 

 

●歴史、土地と繋がる仕事

依田さんは、自らは特別信仰心が強いわけではないと話すが、七面山によって赤沢集落(かつて身延山と七面山とを繋ぐ街道の宿場町だった。現在は重要伝統的建造物群保存地区に指定され多くの観光客が訪れる)が栄え、代々生きてきたこと、今も七面山が生活の一部として当たり前なものである自覚があるという。
「早川の人が1人も強力をやっていないなんて」。依田さんが強力仕事に踏み切ったきっかけは、同時に当たり前であった七面山、参詣者との関係を見つめ直すきっかけでもあったのだろう。

●そんな仕事だから誇りを感じられる

古くからその土地で引き継がれてきた仕事に就く。人生をかけた覚悟、歴史の重圧、継いでいかないといけないという想いなど、普通の就職にはない様々な感情が交差したことだろう。それでも、仕事を通して、また自分の生き方に誇りを持っている依田さんは輝いて見える。

やまだらけ78号「現代に生きる強力」より>