各地の伝説や昔話には、動物が出てくるエピソードが多い。早川流域の集落で伝わるものの中にも、タヌキやキツネに化かされたというような話がある。
いかにも昔話だなぁ、とも思えるが、内山節氏は著作の中で「一九六五年頃を境にして、日本の社会からキツネにだまされたという話が発生しなくなってしまう」と指摘している。またさらに、伊藤正一氏は「狸は人間の出す音を真似るのが非常にうまい」と、やはり著作の中で実エピソードとともに紹介している。
動物が人を化かすなどという話は、現代となっては、誰も昔話としてしか捉えられないだろう。しかし昔の人は、現代の人よりも、もっともっとたくさん山と向き合っていたのは確かであって、動物による人真似の音を実際に聞いていたのかもしれない。奈良田の古老に聞いた話でも、「キツネに化かされるといのは、本当にあっただよ」と話していた。
◯「早川町誌」
◯内山節、「日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか」
◯伊藤正一、「黒部の山賊」
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