先人の教えに希望を見る 地域と生きる小さな学校 過疎の小さな町の本当の可能性


 

〝デクコロガシ〟は黒桂集落で続いてきた小正月行事の道祖神祭りの一環で、子どもたちが主役となる。顔に太く大きく眉毛や髭を塗った子ども道祖神が、山から伐ってきた丸太を小切って制作する〝デク〟を携えて集落内の家々を回る。「おめでとうごいす」「祝っとくれ、祝っとくれ」と〝デク〟を畳に転がし、祝袋に花(祝儀)を要求するやり取りを楽しむ。

地域と一体となった教育が展開されている早川町立早川北小学校。中でも40年以上継続している民話劇は、学区内の各集落に伝わる昔話や伝説を題材に、児童が集落に赴き、老人たちから物語の背景や方言を学び、台本も児童たち自身が制作し、全児童が出演して、学校の一大行事『わらべどんぐり祭り』で披露される。令和2年度は、黒桂集落の『デクころがし』が題材に選ばれた。

この年の『わらべどんぐり祭り』はコロナ禍の中で規模が大幅に縮小され、民話劇も入場が厳しく制限された中で披露された。そんなご時世の中、子どもたちは最後の場面で「祝っとくれ、祝っとくれ」の文句になぞらえて、コロナ禍で塞ぎ込む世相に対して、「みんなが元気でいられる世の中に、なっとくれ! なっとくれ!」と〝デク〟を転がした。

山あいの多自然居住地域で成長する子どもたちが、自分たちで考えた台本によって、世界に向けてメッセージを発信したこの場面に、過疎の小さな町の本当の可能性を見た気がする。

 

〇公式ガイドブック『めたきけし』09