早川町内の早川集落では、かつて、集落の全世帯が参加する、共同味噌作りという地域文化があった。もう途絶えて50年ほどにもなるそうだが、それがなんと、令和元(2019)年に復活した。
集落共同味噌造りには、集落中から集めた大豆を夜通しで、大きな桶をかぶせて石窯で蒸し上げるという花形行事がある。住民や生産量が多い時代には、それを何日も続けたそうだが、50年も途絶えていたので石窯も崩れてしまっていた。復活プロジェクトは、同じ年に石垣修復ワークショップが早川町内で実現したことで現実味を帯び、機体が大きく膨らむ。「石窯だって直せるんじゃないか」と、集落住民をはじめとする復活プロジェクトのメンバーが、みんなが前向きになれたわけだ。
蒸し上げ作業の当日、大きな桶を動かす天秤棒を操作する人たちの先頭に立ったのは、早川流域生え抜きのジイちゃんだった。私たちの地域を限界集落と呼ぶ人たちに、こんなことをやってのける度量があるだろうか?
地域で引き継がれてきた「民芸」とも言うべき技術には、そしてそれがもたらした風景の復活には、計り知れない希望と励ましのエネルギーが備わっている。
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