山の恵みに体が喜ぶ 温泉1/西山温泉 1300年前分の湯治の歴史。日本最古の温泉宿


この町には、大勢の湯治客に愛され続けている、歴史の古い温泉がいくつも存在する。

早川町でも、名湯が並ぶ地域「西山温泉(にしやまおんせん)」は全国的にも有名だが、最北端の奈良田(ならだ)地域は、温泉マニアにとっては隠れた桃源郷とも言える。

名将達にも愛された湯は、飛鳥時代から

西山温泉の歴史は古い。
『西山村誌』によれば、温泉が発見されたのは飛鳥時代末期の慶雲2年(西暦705年)に遡り(※1)、戦国時代から江戸時代にかけては、武田氏の家臣の穴山信友や、徳川家康も西山温泉に入湯したことが明らかとなっている。(※2)

徳川家康は、天正17年(1589年)に西山温泉に入湯したようだ。

時代が下って、19世紀初頭に編纂された『甲斐国志』には、「湯島温泉」という見出しで西山温泉に関する記述がある。

〔1〕大宝年間(701〜704年)にこの地に移り住んだ、藤原真人(=中臣鎌足の長男/藤原不比等の兄:イラスト)が発見
〔2〕真人の息子である四郎長麿・四郎寿麿兄弟が発見

(※1)温泉の発見者に関しては、地元に伝わる伝説によると二つの説が存在する

(※2)写真:穴山氏が寄進したとされる湯王権現鰐口(ゆおうごんげんわにぐち)。町の文化財に指定されている

紀行文に描かれた西山温泉

明治時代になると、「日本アルプス」の名付け親といわれるウォルター・ウェストンや、日本山岳会の初代会長、小島烏水といった登山家、また、風景画家の大下藤次郎、地質学者の大塚弥之助などが来訪し、紀行文を残している。

山梨県出身の童話作家・小野政方は西山温泉を特に気に入っていたようだ。曰く「これほど温度、泉質のよい、いわば入り心地のよい温泉を他に見ない。」

小野は、随筆集『甲斐風土』の中で、明治43年(1910年)頃、初めて西山温泉に入った時のことをこう書いている。
「滔々岩をかんで流れ去る川音、浴槽は大きな自然岩を枕にして、浴床は美しい砂利石だったと思う。無色透明の温泉にはじめて身を浸した(中略)温度はかなり高い。泉質は柔らかくて、湯から上がると、暑さ知らずの深山吹く風(後略)」

とにかく、人里離れた別天地と感じたようだ。

やまだらけ61号「湯治場“早川”の今と昔」より>

 


奈良田の里
「つるつるお肌の美人の湯・優しさ溢れる奈良田温泉」

早川町最北端に位置する奈良田の里温泉。温度が低く入りやすい温泉。ぬるぬる、つるつるした温泉は、体をやさしく包み込み、体と心まで癒してくれる。中には2時間~3時間までお湯に浸かる方もいるそうだ。

温泉の温度は低いが、温泉から出たあとは、だんだん体がぽかぽかしてくる。肌もしっとりとしていて、女性にも大人気。効能も婦人病を中心として皮膚や幅広い病に効果がある。

【泉質】ナトリウム・カルシウム・塩化物・炭酸水素塩泉(低張性アルカリ性高温泉)
【源泉の温度】41.3℃/【pH】8.6


白根館
「誰もが圧倒!納得する湯の力」

硫黄の香りが玄関から広がる。外風呂、内風呂が用意されており、どちらも使用している温泉は同じ。現在でも湯治として利用される方も多く、いろんな病気に効くという。

中でも糖尿病には最高に効くらしく、糖尿病の方の利用が多い。温泉は、エメラルドグリーンで、入ってみるととろみがあり体全体を温泉が勢いよく体を包み込む。まるで、1枚の薄い膜で体を覆われているような感じに陥る。

【泉質】含硫黄・ナトリウム・塩化物泉(低張性アルカリ性高温泉)
【源泉の温度】49.8℃/【pH】8.5


慶雲館
「1300年の歴史。贅沢な湯船に贅沢な湯」

4つの源泉から流れだす湯を使う慶雲館。館内には6つの浴槽が用意されており、どの浴槽からも、迫力満点の山の景色を見ながら温泉に入ることができる。温泉は無色透明で、微かに硫黄の香りが漂う。体の芯からしっかりと温めてくれる。

糖尿病、胃腸病にも効く温泉とされている。もちろん飲泉も可能で、温泉を自宅で飲んだりお風呂につかったりするために、持ち帰るお客さんもかなり多い。

【泉質】ナトリウム・カルシウム・硫酸塩塩化物泉(低張性アルカリ性温泉)
【源泉の温度】52℃/【pH】:8.5


蓬莱館
「昔の歴史を守り継ぎ、昔の湯治場の面影を残す温泉」

ここ蓬莱館は、現在でも湯治場としての面影を残す。蓬莱館の湯といえば、「湯の花」。温泉の中にやまぶき色に輝く湯の花は日によって量が違う。西山温泉特有の柔らかい温泉で、温度もちょうど良い。湯の花と温泉が一緒になって体を包みこむ。

現在でも湯治のために連泊する客が多いという。胃腸病、糖尿病、神経痛などの様々な病気に効くとされているのが、蓬莱館の湯。

昔の歴史温泉を大事にしているご主人。本来の湯治場と人間との関係を体全体で教えてくれる。

【泉質】ナトリウム・カルシウム・塩化物・塩化物温泉(低張性アルカリ性温泉)
【源泉の温度】:41.3℃/【pH】:9.21


湯島の湯
「すべて露天。温泉を余すことなく楽しめる」

湯島の湯は全て露天風呂になっている。シャワーも無く、掛け流されている温泉を洗面器ですくい、体を流す仕組みとなっている。温泉は男女2つずつの浴槽が用意されていて、石風呂と木風呂にわかれている。

湯船に入ると暖かいお湯が体を一気に覆いこむ。まるで肌を通って体の中に温泉が入ってくるような感じをうける。湯船から上がると体が温まり、肌もキュキュッとする。四季折々の山の姿を楽しみながら、贅沢な一時を楽しむことができる。

【泉質】ナトリウム・カルシウム・硫酸塩・塩化物泉(低張性アルカリ性高温泉)
【源泉の温度】38.8℃/【pH】:8.96