大正時代から始まる電源開発、終戦後のパルプ材需要にともなう林業、また多くの集落で行われていた焼畑農業(山作)の関係で、人びとは奥山に頻繁に出入りし、山を活用した生活をしていた。
今よりも多くの人が銃を持ち、狩猟は日々の営みの一つであった。
早川の猟師は、中学生の頃から家の近くでキジやウサギ、ヤマドリなどをわなで獲るようになり、その流れで自然と狩猟をするようになったようだ。
そして、多様な肉が簡単に手に入る今になっても、昔ながらの「食べるため、生きるための修行」の精神を受け継がれ、獲物が取れたことに対する感謝、そして獲ったものは一切無駄にせず、全て使い切ることに、猟師は強いこだわりを持っている。
猟に必要な能力として
1.山や動物に関する知識
2.山をかけまわる体力・獲物が来るのを待ち続ける忍耐力、洞察力、想像力、対応力、度胸
3.技術(鉄砲や道具を使いこなす技術、肉をさばく技術など)
4.仲間とのチームワーク(1人の場合もあるが)
5.仕留めるときの集中力
などがあるが、猟師には非常に多くの要素が必要だ。
狩猟で最も達成感を感じる時は獲物を仕留めた瞬間であろう。そこに至るまでには、綿密な作戦を練り、どこからどう追い込んでいくかイメージをして持ち場に入る。
しかし自然が相手となるとイメージ通りにはいかない。動物も犬や人間の存在を察知し、たくみにすりぬけていく。
かと思うと突然、思いもよらないところから姿を表し、鉄砲が間に合わないばかりかこちらがケガを負うこともある。
動物の方が一枚上手だったということも珍しくない。
しかし猟師は負けず嫌い。リベンジを誓い、何度も山に入るのだ。
狩猟は、時に命さえも落としかねない、自然との真剣勝負である。
動物との知恵比べ、優秀な相棒(犬)の存在と仲間とのチームワーク、銃の腕前、山をかけまわる知識と体力、獲物が現れるまでじっと待ち続ける忍耐力。狩猟には思った以上に多くの知識や技術がいる。いくら腕の立つ猟師でも、思い通りにいかないことも多い。
それでもなお、山に入り続けたいと思う狩猟の魅力はどこにあるのだろうか。
参照:山人ルーツ(vol.0)
早川の人々の「たくましい生き方」の記録。
早川の生活文化を取り入れた、楽しく、豊かな暮らし方を伝えること。
人口減少や生活様式の変化によって昔ながらの暮らしが失われていく中、この2つの意味を込めて発行しています。